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Mの「Enzo Bonafe」考~スペシャルインタビュー~ [リポート]

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84歳になった今でも一人の職人である、という矜持。

「生活のため、生きていくためです」。

靴好きの心をくすぐるような甘い言葉を期待していたワタクシを嗜めるような一言から、

そのインタビューは始まりました。

「これまで靴づくりを続けてこられた情熱の源泉は?」

という質問にEnzo Bonafe氏は答えました。

『経済的な必要性、生きるため、食べていくためです。
私の家は豊かではありませんでしたから、戦争が終わり次第、生活していくためにもすぐに働く必要がありました。
そして13歳の時に見つかったのがたまたま靴の仕事でした。A.TESTONIで働いていた親戚が誘ってくれたのです。
まだ幼く、もちろん経験もなかったので倉庫係などの雑用から始めました』

食べていくことに必死で仕事を選ぶ余裕もなく靴の世界に入ったEnzo少年は、

見よう見まねで仕事を覚え、

一足いくらの給金を稼ぐため如何にスピーディーに靴を作るかの技術を磨いていったと言います。

そして靴作りに必要なことはすべて現場で学んだと、それは今でも変わらないと続けます。

『高層ビルを建てるにも基礎が一番大事なように、靴づくりにおいてもベースが最も重要です。
靴のベースは「木型」です。
良い木型を作るために必要なのはanatomicな知識です。私はA.TESTONIで勤務していた15年の間に経験を通じて学びました。当時は学校で学べるわけではなくインターネットもありませんでしたから、そうするしか術がありませんでした。
そして自分のブランドを立ち上げ靴を作るようになった今でも、常に現場でトライ&エラーを繰り返し学んでいます』

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世界中に多くのファンを持つブランドになった今でも、

生き残っていくために一人の職人として現場に立ち、学び続ける。

『私はいま84歳ですが、息子が追い出したりしない限り工房に立ち続けますよ(笑)。取り扱いが難しいコードヴァンは今でも自らの手で裁断しますし。
体力的にも何も問題ありません。月曜から日曜まで働いてトレーニングしていますから(笑)。慣れ親しんだ工房でなら10時間でも作業は出来ますよ』

言葉の端々に見えるのは、長い時間とパッションを注ぎ込み、

妥協せず一足一足を作っているという強烈なプライド。

それゆえ己の信念から外れる靴には、例え他のブランドのものとは言え容赦ない。

『日本にくるたびに沢山の靴を見るのですが、ハンドメイドと謳っていながら「見せかけ」の靴が多くショックです。
爪出しや目付けなど、一般の人には判断がつかないような部分まできちんと手作業でやっているのか。
我々は九分メーカーですが、七分程度のところが多いですね』

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84歳の生粋の靴職人に、個人的に気になっていることを最後に聞いてみた。

いま日本ではスニーカーが主流になりつつあり、

特に若い人の間では“革靴離れ”が進んでいますが、

時代が求める靴と自分の靴づくりの信念との間に乖離が生じた場合、

どのようにバランスをとっていますか?

『イタリアでもスニーカーブームですが、自分たちの靴づくりにおいてスニーカーを意識することはありません、ゼロです。
まあそういったものを意識して靴を開発するには、トシをとりすぎたかもしれませんが(笑)。
少なくとも我々の顧客の場合は、父親がビスポークする際に子供がそれを見て育っているので、たとえ小さい頃にスニーカーを履いていても、ある程度の年齢になり、それなりの収入が得られるようになれば自然に我々の工房を足を運び靴を作るようになります。“父親を見て育つ”のが我々の顧客の特徴とも言えますね。
スニーカーのようなカジュアルな靴が流行するのも理解できますが、我々が作るようなエレガントな靴も決して欠かせないと信じています』

【インタビューを終えて】
生ける伝説とも言えるEnzo Bonafe氏へのインタビューは、53年生きてきた中で最大の緊張とともに始まりました。
「下手な質問をして嫌われたくない」と、ドタキャンしようかと考えたくらいでしたが、インタビューさせてもらって本当に良かった。
その職人としての生きざまに触れ、さらにEnzo Bonafeという靴が好きになりました(ワタクシのコレクションの一部をこちらで紹介しています)。
セットしていただいた関係者の皆さんに改めてお礼を申し上げます。
なお今回のインタビューでは、「Le Yucca's(レ ユッカス)」の村瀬由香さんに通訳をしていただきました。急なお願いになったにも関わらず快諾していていただき、本当に有難うございました。

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2018-10-28 12:00 
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